別れた彼女とは疎遠になって、今では顔さえ朧げな記憶になりつつある。
それなのに、昔なんとなく好きだった子の笑顔がはっきりと思い出せるのは何故だろう。
どこかで見かけたら再会に運命を感じてしまうかもしれない。
「おやすみプンプン」を読了した。
この物語を敢えて一言でまとめるなら、
「1人の女性に翻弄された男とそれを取り巻く人間の群像劇」といったところだろうか。
物語の細かいディテール、登場人物のやり取りや心の機微。
読者それぞれの日常に還元できる具体的な価値観が詰まっている。
人間の奥深く深く、人間の黒い部分をこれでもかというほどさらけ出してくる。
元気がないときに読めば、生きることが嫌になったりする人いるだろう。
それでも世界は終わらないし、人類は滅亡しないから。
だから先に進まなきゃいけないんだ。
そうして繰り返される日常の断片を仄めかし、この物語は完結する。
“青春ラブストーリー”という作者の説明には第一話で見事に裏切られた。
だが、読み終わったあと、その意味を咀嚼するうちに腑に落ちた気がする。
プンプンの青春は愛子ちゃんと共にあり、そして愛子ちゃんと共に終わったのだと。
愛ほど歪んだ呪いはない。
プンプンの人生には愛子ちゃんの影がいつもあった。
終わらない青春に囚われ、愛子ちゃんのいる世界の物語を生き続けるという”呪い”。
これから七夕の日が来るたびに、僕はまた思い出さずにはいられないだろう。
この漫画は現実を忘れさせるための漫画じゃなくて、現実と戦うための漫画なのだから。