はじめて学ぶ物理学[第2版]を使うべし
高校物理を独学する順番
力学→電磁気→波動→熱力学→原子
高校物理を独学する上で最も効率よく学習を進められる順番とは, ズバリ入試の頻出順です。
力学・電磁気
力学・電磁気は, 受験物理で最頻出かつ微積を使う恩恵を最も受けやすい分野です。
特に力学の分野で初出の単振動は, バネや振り子, 浮力, ピストン, 地球トンネルなどの力学モデル, 電子回路など分野を跨いで広範囲に出題される現象なので, 力学の段階で必ずものにしておきましょう。
波動・熱力学
波動・熱力学は, 選択問題になることも多い分野です。
高校物理の範囲では, 波動や熱力学の面白さを実感しづらいですが、ここは踏ん張りどころです。
また指導要領の改訂により、高校化学に加えられたエントロピーやエンタルピーという概念も大学で学ぶ熱力学の内容であることに留意して学習を進めてみてください。
原子(前期量子論)
原子分野は受験生が最も手薄になりやすい分野。
この範囲は2次試験ではあまり問われることが多くないため, 優先順位は高くありません1。
微積物理の独学は可能?→難しい
大前提として、物理を独学する難易度はかなり高いです。人から習った方が物理の勘所を把握するのも容易でしょう。
それでも、微積物理を独学しようとする方には, “必要最低限”の学力が求められます。
ここでいう必要最低限とは, 内積や外積などのベクトルの知識、微分積分の基本計算ができることです。
しかし、これらの数学の知識は高校2年生程度で通常履修する単元のため、より早期から物理を独学したい方は高校数学も並行で学ぶ必要があります。
このあとに紹介する本でも、知識を前提とせず適宜書籍内で数学も導入しながら解説が進んでいくスタイルが一般的なので、物理を通して微分積分を学んでいくのが王道と言えるでしょう。
これは一見、難しく感じられますが、物理を通して具体的に微分積分の計算を運用することで、数学の理解も深まります。
微積物理の独学におすすめの参考書
①はじめて学ぶ物理学[第2版]
高校物理の受験対策を独学で行うのであれば, この本が一番おすすめ。
市販の高校生向けの物理の教科書の中では, 一番レベルがちょうど良く感じました。
あとで紹介する2冊は僕が受験生時代に持っていた参考書ですが、個人的には今から学習を始める人はこちらを使用して独学することをオススメしたいです。
同シリーズの演習書もありますが、こちらは買っても買わなくてもどっちでもいいかなという印象を受けました。
②理論物理への道標
高校物理の参考書の中では最もハイエンドな一冊。
大学物理の内容に直接つながるコラム2は受験勉強中の息抜きにもなりました。
はじめて学ぶ物理学[第2版]を購入した上で、さらに何冊か副読本として手元に置いておきたい方にオススメです。
③新・物理入門〈増補改訂版〉
僕が受験生時代に使っていた参考書です。
この本の文章には、何度も読みたくなる格調高さがあります3。
はじめて学ぶ物理学[第2版]を購入した上で、さらに何冊か副読本として手元に置いておきたい方にオススメです。
補足・注釈
補足
・上記3冊のどれも難しく感じた方は微積で解いて得する物理(細川貴英, オーム社, 2017)を読んでみると, 物理の考え方の基本のキが学べます。僕も高校生のときに読みました。
・高校物理の教科書ははっきり言ってゴミです。資源ゴミ。天下りで提示された公式を丸暗記して, 問題文の条件からパズルのように公式を組み合わせて問題を解く訓練をするのは時間の無駄です。
・高校物理の独学の順番は入試頻出順だと書きましたが, もう少し深掘りしておくと大学入学以降に基礎として身についていると望ましい優先順位でもあります。
・高校物理で一番つまらない分野は熱力学ですが, 大学物理で一番おもしろい分野も熱力学です。
・もっと発展的な内容を独学したい方は「受験が終わってから」以下の記事を参照してください。
注釈
- 量子力学の体系が確立する以前の過渡期の内容が多く含まれるため, 高校生の時点で学ぶことは先入観に繋がるのではないかと個人的には思っている。 ↩︎
- 例を挙げると, ↩︎
- この参考書の著者である山本義隆氏は科学史の本や解析力学の教科書も書いているため, 大学以降でも物理を学ぶ方は名前を見る機会が今後もあるだろう。 ↩︎